【エス(仮)】設定&背景

あらすじ

どこかの世界線の日本。ある地方は五つの区域に分断されており、政府が機能している中心部を除く東西南北四つの地域は、それぞれの自警勢力が「呪力」を行使できるを筆頭に、各区域を統治していた。そんなこととは無縁だったはずの平凡な大学生・星乃 統の元に、北部の守護司を名乗る男・猪瀬 陸が現れ、「あなたは北区を統治すべき王です」と告げる。


舞台背景

「N」は北部地区、「S」は南部地区、「W」は西部地区、「E」は東部地区。真ん中の「C」は都央地区。

中心に位置する都央地区では政府が機能しているが、それ以外の区域にはそれぞれ自警勢力があり、各地域を治めている。自警勢力の長はと呼ばれる人物で、王一人につき一人、守護司と呼ばれる従者が側近についている。王と守護司には呪力を使うことができる者が就く。

呪力とは、一部の人類があるとき不意に使えるようになった能力で、いわゆる超能力のように物体に直接触れなくても万物を操ることのできる力である(ただし行使する人物によって能力の差はある。また、呪力をもってしても質量保存の法則から逃れることはできず、ゼロから物を生み出すことは不可能)。

王の能力と意識は転生する。王の死後、守護司は王の転生先を一刻も早く見つけて自警の任務に就かせることが重要である。転生先の人物は、始めは自分が次の王の器であるとの自覚はないが、あるとき突然王の能力と意識を取り戻す。この現象は一般的に覚醒と呼ばれる。


各地区について

東区(霞ヶ沼)


【特色】

都央を中心に見て東に位置する地区。住居表示は霞ヶ沼(かすみがぬま)。土地面積の半分以上が海面上昇により水没しており、水中に生活環境を整えることで成り立っている地域。唯一海に面している地区で、水没都市区間からは海外への船も出ており諸外国との交流も行なわれている。十数年前までは感染症や犯罪が蔓延る荒れた地域だったが、区域を治める自警団が現在の組織形態になった以後、街のインフラが整備されて開放的で明るい地域となった。汚水でまみれていた水没都市区間の海水も透き通るようになったおかげで、海中生物も豊かに暮らしており、区内にいくつか建設されている海中展望塔は観光地としても栄えている。海上を移動する主な公共交通機関はボートやゴンドラで、海中を移動する際は地下トンネルや浅瀬を通る列車が利用されることが多い。気温が15度を下回ることのない暖かい地域。

豊かな土地を持たないため、農業や酪農など食糧調達の面は南区からの輸入でやりくりしており自給率は非常に低く、海上・海中列車の製造も南区に委託している。そのため漁業面では南区を手厚く支援しており、乾燥した南区の土地に人工の川を流したり貯水池を整備したりしているのも東区で、南区とは良き貿易相手として友好的な関係を築いている。

【自警団】

呪力の研究をしている都央政府の出資法人「呪力及び付随発生現象研究機構(通称呪力センター)」を兼ねる組織で、東区の王は呪力センターの理事長を兼任している。水力発電で貯蓄した電気を使用して住民の生活環境を整備しており、エネルギー資源に関しては100%自給自足で動いている。拠点の建物は海中都市の東南にあり、呪力センター職員が勤務する塔と繋がっている。職員のうちにも呪力を使える者が多数いる。

万波(まなみ) まこと

東区の王。呪力センター理事長。東区出身。自立心の強い凜々しい性格で、物事をはっきりさせたいタイプ。歯に衣着せぬ物言いをするので他人と衝突することも少なくないが、仲間や部下を守り、特に若い者への支援に熱心で住民からの信頼は厚い。ただ、20代前半のうちから「呪力センター」内で長を名乗り上げ、保守的な考えを持つ初老の男性だった前任の理事長をその地位から引きずり下ろし、東区を抜本的に改革しようと積極的に動いたため、一部の住民からは煙たがられている。

32歳。女性。アロマンティック、パンセクシュアル。恋愛はせず特定の恋人は持たない。セックスをするのは好き。小麦色の肌に青い目。黒髪のショートボブで、明るい色のメッシュを入れていることも多い。両耳に一つずつピアス穴が開いている。一人称は「私」。

リンドホルム 暢(みつる)

東区の守護司。呪力センター副理事長。北欧出身。刻印は額の右端。まこととは幼馴染みで、家族ぐるみで長年の付き合いがある。世話焼きで面倒見が良いが、それが仇となり自分の身の回りのことを疎かにしがちである。知的好奇心が強く、特に日頃から呪力に関して追究しているため、王のことを研究対象として観察する目も持っている。ワーカホリック。あまり自宅に帰らず、職場で寝ることが多い。呪力で水を用いる戦闘が得意。

32歳。自認性は女性だが、性別を区別されないプロナウンを好む場合もあり、言葉遣いの性表現は男性に近い。レズビアン。白色に近い肌に金髪のロングヘア、緑色の瞳をしている。海中都市の繁華街で接客業をしている彼女が一応いるが、仕事を優先してしまうため微妙な距離感にいる。喫煙者だが電子煙草しか吸わない。一人称は「俺」。


西区(吾妻楽城砦)


【特色】

都央を中心に見て西に位置する地区。住居表示は吾妻楽(あがつまらく)だが、その相貌から一般的には吾妻楽城砦と呼ばれている。土地面積が都央地区の次に狭い地区だが人口は最も多く、人口密度が高い。スラム街。狭い土地にたくさんの住民が住むため、集合住宅が上へ上へと増改築されて、ブロックを組み立てて大きくした魔窟のような城砦状になっている。建物が敷き詰められているため、内部は常に夜のように暗い。内部は住宅が密集しているが、店舗や小学校などもあり、住民のほとんどは連帯感を持って日々暮らしており、電気や上下水道の機能は住民の中の業者が受け持って稼働させている。密接する建築物は20階以上ある建物もあるが、エレベーターはない。他地区の住民は近寄りたがらない地区。

実態は法律や行政の目が届かない無法地帯で、昼間から賭博や人身売買が行なわれており、他の地区では流通していない紙煙草や麻薬はもちろんのこと、食用の人肉まで購入できるとの噂まである。地域一帯を治めているのは西区自警団「五龍(ごりゅう)」で、住民にとっての法律は彼らであり、彼らに見逃されている限りは何をやってもいいという歪んだ判断基準が蔓延っている。

【自警団】

西区自警団「五龍」の名で知られる。現在の四つの自警団の中では最も団員数が多い。血の気が多いことでも有名。団長は代々背中に龍の刺青を彫っている。吾妻楽城砦の外れに位置する一棟を拠点に活動しており、日頃から区内を闊歩して警備の目を光らせたり住民と雑談したりしている。団員の大半が呪力を使えないが、住民の悪行を暴力や恐喝をもって正すことも多いため恐れられている(そうして住民から取り上げた薬を団員が楽しむなどは多々)。呪力が使えるのは幹部のうちごく一部。 

ザカリー・フェレイラ

西区の王。「五龍」団長。東区出身。口数が少なく粗暴だが堂々としており、普段は寡黙かつ穏やかで気が長く、拠点からあまり出ない。権力を振りかざすようなことはしない。現在の王の中では呪力の力が最も大きく、時折意図しない場面で呪力が発動してしまう。違法建築を繰り返した吾妻楽城砦が倒れずに形を保っていられるのは、彼が呪力で常に建物を支えているからであり、そのためザカリーは西区の外へ出ることができない。団員から羨望の目を向けられているが、本人は興味がない。

35歳。男性。パンセクシュアル。左目の下に黒子が二つある。肌は褐色で髪はシルバー。タトゥーが好きで、右手の甲には目玉、胸には十字架、左腕には鳳凰、右腕には聖母マリア、首には蜘蛛、腹や腰には蛇など、統一感のないタトゥーを全身に数多く彫っている。キリスト教徒。喫煙者で、紙の煙草を好む。酒豪。一人称は「俺」。

藤堂 睦(とうどう むつ)

西区の守護司。「五龍」副団長(歴代で最年少幹部)。西区出身、西区育ち。刻印は左鎖骨の上、左脇腹。口が悪いうえに気が短く暴力的だが、情には厚く礼儀や恩は忘れない。王の会合が開かれる際は、吾妻楽から出られないザカリーの代理で出席している。愛用の武器はバットで、呪力で電気を操ることを得意としている。日頃から城砦の上階から飛び降りて着地したりしているためか、脚力も強い。西区の住民からは、ザカリーの乱暴な右腕として恐れられている。

26歳。ノンバイナリー。マセクシュアル。ピンク色の長髪に黄緑色の瞳で、両耳にピアス穴を複数個開けている。メイクを欠かさない。余談として、睦は出生時に割り当てられた性別は女性のAFABで、外科手術(乳房切除術)を経てホルモン治療を継続しているので生理などはない。女性用の肌着を着用している。性について悩んでいる面がある。一人称は「俺」。


南区(相良相見)


【特色】

都央を中心に見て南に位置する地区。住居表示は相良相見(さがらそうみ)。地区の中では住民が最も少なく、人口密度が低い。全ての地区の中で最も面積が大きい。広大な土地の一面に草原が広がる緑豊かな地区で、放牧地としての機能があるため牛や馬など陸上の動物がのびのびと暮らしている。酪農や農業が盛ん。地区内の南へ向かっていくと、芝生の広がる開けた場所に墓石が並んでいる芝生墓所になり、その奥にある集落のうち一番大きな屋敷に墓守の一族が住んでいる。この墓地には全ての地区の死者が集うため、墓石の数も膨大である。民家は赤煉瓦で建築していることが多い。住民は馬や馬車に乗って移動する。また唯一、蒸気機関車が通っている地区でもあり、墓参り目当ての他地区の住民はそれを利用してやって来る。天候はほぼ毎日曇っており、山谷風も強く、雨が数日降らないだけで非常に乾燥する。寒い。自然発生する火災の多さで森林がなくなったと言われている。異常気象の影響が最も大きい。

住民はデジタル分野にはめっぽう弱く、蝋燭で明かりを灯して暖炉で暖を取る生活をしている。食糧はほとんど自給自足である。墓地を管理する勤めについている墓守の一族が南区一帯を治めている。

【自警団】

団としての名称は持たない。実質、墓守一族=自警団であり、団の構成員数は四つの地区で最も少ない。墓守一族は王である祢の親族に当たるが、自分達は呪力が使えないため、守護司であるルークに祢の世話を託している。南区の住民のうち呪力を使えるのは、確認できているだけでも祢とルークのみである。拠点かつ居住地である墓守一族の家は赤煉瓦で作られた大きな屋敷で、調度品は赤色や金色、濃いブラウンで統一されたヴィンテージであり、暖炉には常時火が揺れている。

尚 祢(なお ない)

南区の王。墓守一族の一人娘。東洋出身。先代の王である祢の母親は、祢の出産と同時に命を落としたが、その転生先が娘である祢だった。現在はまだ転生した能力と意識が覚醒していないので、一般的な小学生として学校に通っている。覚醒後は自分の体よりも大きな鎌に火をまとわせて呪力を使って動かし、戦闘する。柔和で落ち着いた性格で、四人の王の中でも最も争いを好まないが、国中の遺体と魂が集まる巨大な墓地としての南区を守ることを先祖代々唱えられてきているため、墓守の仕事を全うする目的では、敵襲や横暴に容赦しない。読書好きで、尊敬する人物はヴァージニア・ウルフ。

身体年齢10歳。女性。ヘテロセクシュアル。転生前は異性婚もしていた。明るい栗色の長髪に、同じ色の瞳。一人称は「私」、覚醒前は「あたし」。

ルーク・エヴァンズ・ギラム

南区の守護司。墓守一族に仕える世話係。西洋出身。刻印は左手の甲。かつては祢の母親の守護司をしており、現在はその娘の親代わりとなっている。「墓場の死神」の異名を持つ。冷静かつ常識人で、率先して祢の役に立とうとする姿勢を見せるが、少々抜けていたり感情がすぐに表情に出たりする。呪力で火を起こして使うことを得意とする。燃えにくい革素材でできた黒手袋を常に両手に嵌めており、呪力を行使して火を扱うときだけ外す。

31歳。男性。バイセクシュアル。現在は東区の王である万波まことを愛しているが、それ以前は男性と付き合っていた。目の下に大抵クマがあり、疲れた様子をしている。茶髪のくせ毛。乾燥を予防するためサージカルマスクをしていることが多い。大抵、喪服のように黒いスーツに身を包んでいる。一人称は「俺」、時に「私」。


北区(百目鬼)


【特色】

都央を中心に見て北に位置する地区。住居表示は百目鬼(どうめき)。地区の北部は地方都市の雰囲気で、一軒一軒の敷地が大きい住宅街になっている。地区の南側はデジタル化しており、清潔で生活環境が整っている。この周辺は都央政府の手が行き届いている地区であり、インフラの整備や消防動員などは行政が整備するAIロボットが行なっている。電気自動車を所有している家庭もあるが、太陽光発電システムを利用した自動運転の電気タクシーや路面電車が常時走っているうえ、買い物などの宅配サービスは無音ドローンが行なっているため、全体的に静かな街である。空気は最も汚染されておらず、水道水は直接飲料水として使用できる。土地価格や税金の高騰が顕著で、北区で住まいや仕事を失った住民が西区にたどり着くという循環ができている。

都央に通勤する人々のベッドタウンとしても栄えている。また都央の大学に通学する学生も大半が北区に住んでいる。

 【自警団】

現在、王は不在。北区では都央政府の機能が生きているため、実質活動休止中である。

星乃 統(ほしの はじめ)

北区の王(?)。北区出身。都央地区の大学に通う大学生。勉強は好きでも嫌いでもなく、得意でも不得意でもない。自分は特におもしろみもない平凡な人間だと思っており自己評価は高くも低くもないが、差別や否定をしない共存の象徴のような人物。心優しく子ども好き。母親は都央政府職員で、父親は幼少期に亡くしている。一人っ子。

22歳。答えるべき場面では男性と回答するが、実際は性自認も性的指向もよくわからない状態にあり、わからなくていいと思っているクエスチョニングである。性表現は男性に近い。黄色人種で、青みがかった黒髪に同じ色の瞳。まつげが長い。飼ってはいないが猫が大好きで猫グッズを大量に持っている。甘党。一人称は「僕」。

猪瀬 陸(いのせ りく)

北区の守護司。西区出身。刻印はうなじ。よく微笑んで飄々としており、社交的で人との間に壁を作らないが、その反面謎が多くつかみどころがない。好戦的で戦闘時は容赦がない。「最強で最凶の守護司」と言われているそうだが、その所以は誰にもわかっていない。先代の北区王が亡くなってからずっと次期王となる転生先を探し歩いていたが、ようやく統を発見した。呪力で周囲の重力や物体を操作して戦闘するスタイルだが、身体能力も高い。頭が良く暗算が得意。

26歳。男性。アロマンティック、アセクシュアル。恋愛や性的な話題に一切興味がなく、話を振られたら受け流す。オリーブ色の髪にパーマをかけており、両耳にピアス穴が開いている。赤褐色の瞳。一人称は「俺」。


都央地区

【特色】

五つに区分けされた地域の中心に位置する地区。住居表示は都央(とおう)。土地面積は最も小さい。北区の南部に似た環境で、商業施設や大学などの学校、行政機関などが集まる地区で、住宅地はない。通勤通学する人々の寮程度ならある。街中に監視カメラや人体検出センサー、呪力感知センサーが張り巡らされていて、都央政権が全ての人々の行動を把握、統制している。そのため自警団はない。

都央政府は、元は五つの地域全てを治める議院内閣制の政治権力だったが、現在は内閣総理大臣の独裁政治状態になっている。北区を除く三つの地区の公共事業には関与しておらず、それぞれの地区の統治を一任している状態だが、裏を返せば放置している状況でもあり、東西南区で問題が発生しても責任は取らない。


登場人物関係図