二次創作をやめる話とか

 ここ数年、自分自身について様々な観点から見つめ直す機会が多くて、それは展示で出会った作品とか誰かの言葉や状況とかがきっかけになっているのだけれど、見つめ直してみると本当に、自分って自分のことを全然理解できていなかったのだなと痛感する。

 例えば私は思っていたよりも他人の目を気にするし、自覚していた以上に抜きん出たいという意欲(意地……)が強いし、一人でいることは必要で好きだけど孤独なだけじゃ絶対に生きていけない人間だし、私ずぼらでさーとか喋っていたけれど案外計画的で几帳面で綺麗好きだし、体に現れる以上に感情的だ。

 

 具体的な夢に向き合うことを決心してから、限られた時間を有効的に活用しようと思い、余分(と思われる)部分を削ぎ落としていくことを進めている。当然「余分」の中には必要な余分もあるのだけど、とにかく一度はやってみようというチャレンジ精神で、いらんわと思えたものはいったん消す、とか、去る、みたいな、そういうふるいを振ってきた。その流れで、ずっと時期を見計らってきたのだけれど、ついに二次創作をやめようと決意した。

 私が文章を書き始めたきっかけは、それこそ二次創作だった。当時高校二年生。少年漫画の二次創作BL小説を、ガラケーのメール作成機能を使ってポチポチ打ち込んでいって、完成したらそれを個人ホームページに投稿するという方法で掲載していた(当時の個人サイトには、特定のアドレスにメール送信すると自動的に小説投稿画面に反映されるというシステムがあった)。文字数こそ覚えていないけれど、そうやって書くことが楽しくて本気で夢中になっていて、今だから白状できるけれどそのせいで大学受験勉強もまともにやっていなかった。地の文スカスカの、古典劇翻訳みたいな会話文ばかり繰り返される形式の文章だ。何本も書くうちにおおよそ小説のような体裁には近付いていったものの、二次創作小説を少しでも読んだことのある人なら想像つくでしょう、そもそも二次創作の小説というものには一般的な小説のルールが適用されていない。三点リーダがいくつ並んでいようと、突拍子もない改行が連発されていようと、どんな散文であってもそこに描かれるカップルがかわいかったらそれでいいのだ。そんな文章をいくつもいくつも書いた。登下校中の電車の中でも書いていた。没頭とはまさにあれのことで、時間を忘れ、書いていたら同じ姿勢のまま四時間いたとか、一晩中書いていたせいで徹夜で学校へ行ったこともある。

 その後、なんやかんやあって一次創作もやり始め、ずっと小説と漫画の両方をやっていたものの一時は漫画だけ描いたり、動画も作ってみたり、様々やりたいことをやってきた。オリジナルをやり出してからも、二次創作も同時並行でずっと活動していた。いろいろなジャンルで書いて(描いて)、移動してはまたかいて……と、やってきたけれども、その流れは途切れることなく、「どのジャンルの二次創作もやっていない期間」というのは、スタート地点の高二から今まで一度もなかった。

 ところで(漫画の話は置いておいて、)小説、かなりの量を書いてきた。もともと、二次創作では文字数多めの小説が好きだったので、一回で書く文章量も多かったけれど、それを何本も書いた記憶はある。どのジャンルでも。

 これには正直誇らしさもあるが、これまで十何年も止まることなく書き続けてきたせいか、筆は早いほうだと思う。五千字程度だったら一時間で書ける。もともと二次創作小説では推敲をあまりしないので、特に一万字未満の短編だとまあ全くしないから、ssとか言いながらぽっと上げるものはそのまま投稿フォームに打ち込むことも多い。これも今だから言える話だけれど、(恥ずかしい話だが)実を言うと卒業論文は二日で書いた。どうしてそんなに早く?、と嬉しい言葉をいただくこともあるが、私の経験から言えることは一つしかない。だってたくさん書いてきたから。

 それを、やめようと思います。限られた時間の中で、行動の面でも精神の面でも他に優先したいことがありすぎて。文章面では二次利用ではないものをメインに鍛えていきたくて。それに、長期的な目線ではなく即時的な反応を求めるのは私の場合は望む状態と違うので、すっぱり切り離してアドレナリン分泌を健全にしていきたい。抽象的(?)な言い方で申し訳ないですけれど、つまり、二次創作小説を書いていると今はもうその先の利益と損失を考えてしまうということ。

 理想はここからきれいにオリジナルを書いていきたいですけれども、正直自分は読むほうが全然足りていないことを自覚しているので、読むことにも集中していくつもりです。先月はかなり集中できた。一日一冊くらいの頻度だった。でもまあ無理はせず、中村文則さんの言葉を念頭に置かせていただきながら、じっくり向き合っていこう。

 

「どうしても何かを目指すときは、それを目指さないと自分の人生が始まらないと思っちゃうんだけどそれは違っていて、それを目指している間も貴重な楽しい人生なので、目指す過程も楽しんだほうがいいですね。長い目を持って目指すのがいい」

 「人生に、文学を」オープン講座in上智大学四谷キャンパス 

 2017年5月20日(土)第6講 中村文則さん「文学との可能性と面白さ」

 https://www.youtube.com/watch?v=zO2Fokqwd9k&list=FLq_NeIcEu9O_m3uWylXk1dQ&index=1

 

 勉強したいことも多い。SNSを見る時間もすーごく減らしている。お酒も、毎日飲むくらい好きだったけれど今は飲み会でしか飲んでいない。運動は継続させている。それでも私の理想の生活にはほど遠いので、自分の惰性との闘いだけれども、疲れてしまわない程度に変化を遂げていきたい。

 自分とは一体どんな人間なのか、という対峙を避けずに私のやりたい文学には臨めないので、それにも時間をかけつつ、なにより楽しんで、やっていきたいと思う。新しい経験をして、これまでの道のりを振り返って、人に会って、自分と会話して、……やりたいことは多いけれども、それも人生。とりあえず今は、先日ついにかかってしまった新型コロナウイルスを治します。今日は味覚が若干戻ってきた気がして、本気で涙ぐんだ。おいしいって幸せだよ……。